花でも鳥でも風でもなく海(大竹ひかり)

クリッピングから
讀賣新聞2020年4月27日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週は最優秀作3首以外から
僕が好きだった歌を引用してみます。


  まだ少し夕陽を見つける心には
  届かないからビールを一杯

       守口市 小杉なんぎん


ビールを飲む理由にはさまざまあると思うけれど
「まだ少し夕陽を見つける心には届かないから」は面白かった。
僕もビールが飲みたくなりました。


  鵠沼(くげぬま)に春がきたよと告げるのは
  花でも鳥でも風でもなく海

         さいたま市 大竹ひかり


春を告げるもの。
「花でも鳥でも風でもなく」と否定する名詞を三つ重ねたことで
最後の「海」が光って印象に残りました。


  スマホにて支払う初日の緊張を
  レジの若者知るよしもなし

         尼崎市 大花純子


初めてのスマホ決済。
カウンターのこちら側とむこう側。
きっと作者の体験なんだろうなぁと想像しながら
対比の鮮やかさに心引かれました。


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