薄切りにハムをスライスされるごと(田中澄子)

クリッピングから
讀賣新聞2020年4月14日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


図書館閲覧室が休館中なので、
コンビニで新聞を買うようになりました。
その日の気分で朝日、讀賣、毎日を選びます。
朝刊150円(日経は180円)、夕刊50円。


現在、朝日はデジタル版の有料登録会員のみ読める記事を
無料登録会員にも公開しています。
朝日、やりますね!
なので、オンラインで読んでいても、
朝日の紙版、時々購入しています(歌壇掲載の日は讀賣ですが)。
読者も企業の心意気には応えなくちゃ、ですね。


f:id:yukionakayama:20200406140656j:plain:w350
(大王はいつも場所取りがうまい! 感心します)


さて、入選作をひとつひとつ読んでいくと、
最優秀作はどれもひと味違うのが分かります。
万智さんの評が毎回参考になります。


  薄切りにハムをスライスされるごと
  わがすれすれに抜ける自転車

           船橋市 田中澄子

    【評】歩いていたら、接触ギリギリの感じで
       自転車が追い越していった。
       そのヒヤッと感を表現した比喩が斬新だ。
       自分がハムで、その側面を薄切りにされたようだという。


  ウイルスの真のこわさは世界から
  握手とキスをうばいさること

          上尾市 関根裕治

    【評】新型コロナウイルスのもたらす厄災の
       深い側面をとらえた一首。
       予防のためには、人と会わないのが一番という。
       握手とキスという具体が、象徴としても機能している。


  眠りゆく君が発する僕の名の
  フォントは徐々にまるみを帯びて

           春日井市 塚原康介

    【評】「こうすけ」がゴシック体から
       丸文字になっていく感じだろうか。
       彼女の言葉が、吹き出しの中に見えるようで面白い。


優秀作で好きだったのは以下の二首。


  お向かいの干した布団の花柄が
  ふくらんでゆく春の一日

       大阪府 木村由里亜


自分の家の布団でなく、
お向かいの布団に注目したところに「なるほど!」と思いました。
視線を自分の身の回りだけでなく、
ほんのちょっと先に伸ばすだけで歌に広がりが生まれるですね。


  高々とひばりを空へ釣りあげて
  神はひねもす春野に遊ぶ

         宮崎市 長友聖次


少し離れた場所から、
ロングで撮影したような光景が浮かびました。
神さまがひばりと遊んでいるようで
その大らかさが面白い。


f:id:yukionakayama:20200417115207p:plain