クリッピングから
讀賣新聞2020年7月14日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の僕の好きな歌、独断ベスト3です。
迷惑な妖精のごと忍び込み
子の部屋ちょこっとづつ片付ける
三次市 山本美和
【評】気づかれないことが大事。
自分を妖精に見立てた遊び心がいい。
男の子の部屋なんですかね。
抜き足差し足で忍び込む母親の姿を想像すると
なんだか楽しい。
音立てず拍手するごと白き蝶
無観客なるグランドを飛ぶ
池田市 今西幹子
「白き蝶」が飛ぶ様子を「拍手」に見立てた着想で
「無観客」の寂しげな景色を一変させてしまいました。
物事の明るい面を見ようとする作者の視線に感じ入ります。
砂浜に寝転びまぶたで太陽の
熱さをはかる君が呼ぶまで
川口市 高城ナナ
そうでした、まぶたで感じるあの熱さ。
忘れていた身体の感覚が蘇る一首でした。
結句の「君が呼ぶまで」が青春の一コマだなぁ。