遠ざかるパトカーみたく母親に(木村槿)

クリッピングから
讀賣新聞2020年12月1日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、抜き書きします。


  遠ざかるパトカーみたく母親に
  抱かれて外へ向かう2歳児

         名古屋市 木村槿


     【評】魔の2歳児(テリブルツー)と言われる年齢だ。
        大声で泣き、暴れているのだろう。
        その場にいることを諦めた母親。
        上の句の比喩が、動きのある緊張感をとらえてみごと。
   

魔の2歳児(テリブルツー)と言うのですね。
子育てしながら仕事を続けた万智さん、
母親の現場をよくご存知です。


  訳もなく笑いころげていた頃の
  少女のようなポンポンダリア

        上野原市 山崎千代子


     【評】赤や黄色など明るい色合いで、
        球状の花が愛らしいポンポンダリア。
        弾けるような音の響きもあいまって、
        はつらつとした少女のイメージにぴったりだ。


「ポンポンダリア」と詠まれてサッと画が浮かばない
僕のような読者のために簡潔な解説を付けてくれました。
すぐにGoogleで画像で確認しました。


  静止画が動画に変わる季節来て
  鴨が増えゆく池が賑わう

       白井市 毘舎利道広


     【評】季節と動きの変化をとらえた上の句が素晴らしい。
       「鴨の」を「鴨が」と添削してリズム感を出し
        動きを強調してみたが、いかが。


本欄で万智さんが添削内容を具体的に記すのは珍しい。
添削前、添削後を比較すると勉強になりますね。


そうそう今週は、もう1首、ありました。
下の句にひねりがあって思わずニヤリ。


  マスク顔ばかりが集う囲碁の会
  だれがだれだかほぼわかってる

           西宮市 夏川直


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(読者の歌を万智さんが添削して、どう変化するか具体的に見せてくれます)


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