優しい支配もあるのだろうか(岡奎那)

クリッピングから
讀賣新聞2021年4月19日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、抜き書きします。


  バケットに野菜はぎゅっとはさまれて
  優しい支配もあるのだろうか

            川崎市 岡奎那


「優しい支配」って僕にはちょっと思いつかない。
野菜がはさまれる擬音も、「ギュッ」でなく「ぎゅっ」でないと、
「優しい支配」にはならないんですね。


  くずおれている雪だるま走者へと
  さっきバトンを手渡したのだ

           大阪市 toron*


     【評】溶けかけた雪だるまは、
        力つきてバトンを渡した後のリレー走者のよう。
        見た目だけでなく、季節のリレーを感じさせるところが工夫だ。
        これは冬から春へのバトンである。


最優秀作3首は万智先生の評を読んで
もう一度歌を読み返すと味わいが深まります。
リレー走者のあの力つきた感じが思い浮かぶと、
雪だるまの見え方が俄然変わります。


  マスク越しに吹いた綿毛が飛んでいく
  予測できない二回目の春

          東京都 吉村おもち


     【評】コロナを意識するようになって二回目の春である。
        上の句が「予測できない」を導く序詞のように
        機能しているところが魅力だ。
        来年は、マスク越しでなく綿毛を吹ければ。


その歌のいいところを見つけて解説してくれるのがうれしい。
「予測できない」は、綿毛の行き先とイメージが重なると、
コロナ禍の不安が少し軽くなる気がします。


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