おやつのように葉書をいれる(清水一枝)

クリッピングから
讀賣新聞2020年8月25日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


「今週はどんな歌に出会えるかな」
月曜は讀賣の朝刊をコンビニで買ってきます。
万智さんのコメントを読むのも楽しみで。


  色褪せし昭和のポストに微笑みて
  おやつのように葉書を入れる。

           宇治市 清水一枝


     【評】赤い円筒形のポストだろう。
        その口に「おやつ」として入れる葉書という比喩が面白い。
        と同時に、今や葉書は切実な用のためというより、
        潤いのためにあることも思われる。
        まさにおやつ的存在なのだ。


  虫喰いの葉に陽が射して映す影
  光が穴を開けたるごとし

           桜井市 東利行


     【評】描写が過不足なく、まことに的確。
        影を詠みながら、光りの存在感が伝わってくるところが魅力だ。


  泣きまねをすれば涙を拭う手を
  わたしに貸してくれる二歳児

          平塚市 小林真希子


     【評】二歳児の素直で優しい心根。
        涙を拭うのではなく、
        その手を「貸してくれる」という細やかな表現から、
        幼子の動揺が見て取れる。


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それぞれの歌の向こうに
詠み手の暮らしぶり、振る舞いが想像できて
体温が伝わってくる気がします。
Social Distancing(英語ではingを付けて表記)が続く日々だから、
よけいそう感じるのかな。


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