東へ進む船になる家(小林真希子)

クリッピングから
讀賣新聞2020年8月3日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も独断で選んでみました。
3首に絞りきれず、僕の好きな歌4首です。


  梅雨晴れの風にふくらむカーテンに
  東へ進む船になる家

         平塚市 小林真希子


     【評】帆のようにふくらむカーテン。
        比喩の対象を、家が船になるところまで広げたことにより、
        スケールが大きくなった。


静かな光景なのに動的で、
頭の中に絵が浮かぶ楽しさがあります。
家から出なくても、この風に乗って遙かな航海に出られそう。


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  日曜日に君が倒せし助手席の
  角度そのまま赴任地にゆく

          福島市 大槻弘


パートナーのなごりのような助手席の角度。
しばしの別れのやるせなさを
「角度」で表現したのが新鮮でした。


  世に増えたアクリル板に描いてほしい
  水森亜土のキスのイラスト

          上尾市 関根裕治


そうでした、そうでした。
アクリル板のイラストレーションと言えば水森亜土でした。
着地の「キス」が効いてますね。


  参観日ふうっと消えて教室と
  いうステージの取れぬチケット

          足利市 坂庭悦子


「参観日」もコロナ禍のいま、消えていたんですね。
教室をステージに見立てたのが、
「いまどき」だと思いました。


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作者名をクリックすると、以前の掲載歌に飛びます。
それぞれの方の作風が出ていて面白いな、と思います。