クリッピングから
讀賣新聞2019年12月23日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
俵万智さんが今週最優秀作に選んだ三篇はどれも納得。
本欄常連の方々だが、
着眼点、それを着地させる言葉づかいが新鮮だ。
一滴の目薬逸れて頬に垂る
このまま泣いてしまいたい夜
【評】目薬が外れて、まるで涙のように頬を伝った。
そのとき初めて、自分が泣きたかったことに気づいたのだ。
ふとしたことから、無意識の自分に気づく瞬間が、
絶妙にとらえられている。
近付いて離れて秋の陽に笑ふ
小さな川がドライブの友
【評】ドライブの道路沿いの川なのだろう。
動きのある上の句が魅力的だ。
川面のキラキラを「笑ふ」とした擬人化が「友」と響き合う。
内側と外がおんなじ色をした
蜜柑や柿よ彼もそうだよ
【評】果物には、外と中が同じ色のものと、そうでないものがある。
裏表のない彼なのだろう。
素朴な比喩が、文体とよく合っている。
先日、本欄に二句目を投稿したけれど、
掲載句のレベルを見ていると、初掲載はまだまだ遠いなぁ。
常連はそれだけの力があるんだな。