天使の軽さとなりてゆく秋(横田英子)

クリッピングから
讀賣新聞2019年10月21日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


最優秀句から


  病む母の二十二キロとかぎりなく
  天使の軽さとなりてゆく秋
  

       京都市 横田英子


  【評】二十二キロという具体的な数字に胸をつかれるが、
  「天使」の軽さという美しく前向きな捉え方が救いだ。


言葉を過不足なく使い切る俵さんの評が
毎回勉強になる。
歌人は評の文章を書いても歌のような味わいがある。


f:id:yukionakayama:20191014203340j:plain:w350
(栗茹でる秋。近所のN青果店で一山400円)


優秀句から


  当てはまるような単語を一つ入れなさい
  そんな括弧のような秋の日


       垂水市 岩元秀人


句の前半から予想外の着地をする言葉づかいが魅力だ。
秋の日をこう表現できるとはまるで想像できなかった。


  食べ方がとてもきれいな人だった
  ピーマンだけを上手に避けて


       たつの市 七条章子


思わず苦笑してしまうユーモアのある一句。
ピーマンを避けた人が男だったのか、女だったのか。
年齢はいくつくらいで、どんな服装だったのか。
想像がふくらんだ。


f:id:yukionakayama:20191026112450p:plain


考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書)

考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書)

短歌のレシピ (新潮新書)

短歌のレシピ (新潮新書)