クリッピングから
讀賣新聞2019年9月30日
読売歌壇 俵万智選
ペンダント素肌にかけて八月の乳房の谷はしんと冷たし
たつの市 七条章子
触感まで伝わってくる一句。
「八月の乳房の谷」。
簡潔で、凝縮されていて、
読み手に想像させる言葉の連なり。
鉛筆を抜きたるごとく庭土に地蜂の孔の見る二つ三つ
東金市 山本寒苦
観察力がないと書けない一句。
「鉛筆を抜きたるごとく」の言葉を見つけたとき、
作者はきっとうれしかったんじゃないかなぁ。
ベランダに蝉の骸は転がりて読経の様に降る蝉時雨
我孫子市 加藤裕子
夏の終わりの身近な光景から
「死」の普遍を思い起こさせる、凄味のある一句。
蝉時雨を仲間の葬式の読経に見立てた飛躍が新鮮だ。
きょうで9月もおしまい。
2019年の暦も残すところ3カ月となりました。
月並みな感慨だけれど、「速いなぁ」。
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