クリッピングから
讀賣新聞2019年12月10日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週は最優秀作3作品を
俵万智さんの評とともに書き留めておきます。
一年のプラスマイナス振り返り始めるだから十一月だ
東京都 武藤義哉
【評】十一という数字を、プラスマイナスと捉え、
一年の振り返りの時期と重ねている。
まことに機知に富んだ一首だ。
アイデアを結句で明かす工夫も効いている。
回想は気ままな電車君のいた場所を駅にし静かに停まる
高島市 宮園佳代美
【評】知らず知らずのうちに、君のことを思い出してしまう。
そんな切ない心の動きが、駅と電車にうまく重ね合わされた。
「気ままな」からは、自分の意志では抗(あらが)えない感じが
伝わってくる。
地に咲きてキンモクセイのにほふなり少しの雨に一気に散りて
市原市 井原茂明
【評】散った後も最後の香を放つキンモクセイ。
緩急のある下の句のリズムが魅力的だ。
この欄を毎週読み続けていると、
常連の方が何人かいることに気づく。
その方たちの新作を読み、万智さんがどんな評を付けるか、
楽しみになってきた。