浮上を拒む一つ見ている(宮園佳代美)

クリッピングから
讀賣新聞2020年7月6日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週の掲載作品から
僕の好きな、独断ベスト3の発表です。


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  蟻の巣に内線電話がもしあれば
  卵の部屋は002番

        東京都 武藤義哉


  【評】絵本の世界に迷い込んだような想像が楽しい。
     001番は女王アリの部屋だろうか。


こんな空想が短歌の形式に収められると知って
楽しくなりました。
「002番」と無機質に終わるのが印象的。


  手を洗え大声出すな強盗のごときウイルス
  売上奪う

           高槻市 内角仁


コロナウイルスを「強盗」に見立てることで
深刻な経済問題にユーモラスな角度から迫りました。
手洗いを強要する強盗ってなんだか不思議。


  ソーダ水の泡の個性よ頑なに
  浮上を拒む一つ見ている

        高島市 宮園佳代美


「頑なに」「拒む」と重ねられた言葉で
ソーダ水の泡に生命が吹き込まれたような感覚に陥ります。
その泡をじっと観察している作者がいる、ひっそりした時間。


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毎週のようにこの欄を読み続けていると
自分の好きな作者が何人かいることに気づきます。
宮園佳代美さん武藤義哉さんの歌は以前にも書き留めていました。
その方の歌を何首かまとめて読むと、作風があることが分かります。