クリッピングから
讀賣新聞2019年10月30日朝刊
読売歌壇 俵万智選
我の名を忘れし祖父の脳内で
今も登板してゐる金田
狭山市 えんどうけいこ
【評】今月亡くなった往年の名投手、金田正一。
祖父は、ニュース等で名前を耳にしたのだろう。
「我」の複雑な心境はありつつも、
現在形で生き生きとした下の句からは、
祖父の幸福な一面が窺(うかが)える。
日々の暮らしの中で観察した事実なしに
この句の飛躍は生まれない。
認知症の祖父の脳内のマウンドで
今も登板している金田投手!
万智さんの評が過不足なく文章を書く手本。
真夜中の月光の海眺めつつ
潜水艦の孤独を思う
垂水市 岩元秀人
月光の海から潜水艦の乗組員の孤独を想像した
下の句への飛躍が新鮮。
人間だけでなく潜水艦自身も大海の暗闇で
孤独を味わっているのかもしれませんね。
「大とろ」の鮨屋の幟裏がへり
「大うそ」に見ゆさうかともおもふ
つくば市 潮田清
幟の文字「大とろ」が「大うそ」に見えた瞬間、
詠み手は「ハッ」としたんですね。
大発見ですよね。
その発見を短歌の形式に入れる技術を僕も修得したいもんです。
「さうかともおもふ」がうまいなぁ。
旧かなづかいが句のほのぼのとしたおかしみに似合ってます。
- 作者: 俵万智
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2018/02/16
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 俵万智,一青窈
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2010/05/22
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (6件) を見る