マジで歌舞伎町が死ぬと思った(マリモこと巻田隆之)

クリッピングから
讀賣新聞2020年10月26日朝刊
医療ルネサンス No7394
「夜の街」とよばれて 4⃣/8
ライバル同士 情報共有


小池都知事の、歌舞伎町など「夜の街」だけが
コロナ感染拡大の「主犯」であるかのような主張に違和感を持っていた。
讀賣記事はホストクラブのリーダーたちの
現場での対コロナ共闘の実態を伝えている。


  6月からの感染「第2波」の舞台の一つとなった歌舞伎町(東京都新宿区)だが、
  それ以前に現場でのネットワーク作りは進んでいた。
  LINE(ライン)を活用した「歌舞伎町コロナ対策協議会」というグループで、
  ホストクラブ約240店の6割にあたる約150店の代表者が加わった。


  お酒をかき混ぜるマドラーを使い捨てにするなど店が取り入れた対策、
  換気が悪いなど、感染者が確認されて保健所から受けた指導内容、
  行政が発信する仕組み——。
  ラインでは、こうした情報を共有、それぞれ感染対策につなげた。


  この場を作ったのが、
  歌舞伎町でホストクラブ33店舗を経営する巻田隆之(47)だ。
  「このままではマジで歌舞伎町が死ぬと思った」と振り返る。
  (略)


  歌舞伎町には、10店舗以上を抱えるホストクラブの大手グループが六つあり、
  店舗数は120を超える。
  ”商品”であるホストの引き抜きは日常茶飯事で、
  ケンカ沙汰になることもある。
  同業者の組合組織はなく、グループを超えての情報共有はほぼなかった。
  (略)


  最大グループを率いる巻田は、
  「まりも」という源氏名で他のホストたちから一目置かれていた。
  「歌舞伎町を守るため力を合わせて乗り越えよう」
  巻田は各グループのトップに電話し、ラインへの参加を呼び掛けた。
  「まりもさんが言うならば」と反対はなかった。
  小規模店の一部も加わった。
  (略)


  2週間で営業を再開した店もあり、課題も残ったが、
  その後も対応策を助言するなど、
  ライバル関係にあるホストクラブ同士の対コロナ共闘に威力を発揮した。
  (略)


  作業部会(引用者注・政府の新型コロナ対策分科会が設置)の委員で、
  東京都北区保健所長の前田英雄は巻田らの活動を評価する。
  「行政の『上から目線』の情報は伝わりにくい。
  同じ立場からの情報共有は有効だった」

                            (敬称略)


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NHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」が10月16日放送の「秘密の本棚」で取り上げた本)