土曜日は青野由利さんの「土記」が楽しみだ

土曜日は青野由利専門編集委員の連載コラム
「土記 do-ki」を読みたくて毎日新聞朝刊を開く。
クリッピングから
原爆75年とコロナ 青野由利


  非人道的な原爆投下から75年。
  核廃絶への思いを新たにする節目の年なのに、
  新型コロナウイルスが影を落としているのが残念だ。
  (略)


  両者(引用者注:原爆とコロナウイルス)には別の共通項もある。
  疫学の重要性だ。
  原爆では放射線の人体への影響を知るために、
  長年、被爆者の疫学調査が行われてきた。
  そのデータは福島の原発事故の際にも参考にされた。
  (略)


  時代も対象も違うが、新型コロナの疫学調査でも倫理的配慮は重要だ。
  今週、国立感染症研究所が公表したウイルスの分子疫学調査とて、
  役立てられるのは感染者の協力があってこそだろう。
  国内患者約3600人から採取されたウイルスゲノムを比較分析したもので、
  7月中旬時点で考えられるのは次のようなことだ。


  1〜2月に国内流行した中国・武漢由来のウイルスは、その後終息。
  3月中旬から欧州系統が全国各地に流入し、感染拡大につながった。
  それが現場の対策で収束に向かったが、6月の経済活動再開後、
  特定の感染クラスター(集団)を起点に再び全国に広がった。


  興味深いのは、6月中旬に顕在化したこのクラスターは3月の欧州系統由来と
  推定されるのに、間をつなぐ患者が見当たらないこと。
  3カ月間、水面下で軽症・無症状者の感染リンクが
  静かにつながっていた可能性があるという。


  「このウイルスの感染様式をよく表している」
  と感染研所長の脇田隆字さん。
  感染の特徴が確認されるのは歓迎だが、
  この夏、コロナに翻弄(ほんろう)される現実は変わらない。


青野さんは原爆とコロナウイルスを関連付けた今週のコラムを
こんな文章で書き終える。


  だとすれば、これを機に被爆体験や戦争体験、資料を
  オンラインなどで伝える工夫が重ねられるといい。
  コロナで分断される高齢者と子どもたちをつなぐきっかけにもなる。


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青野さんは2020年度日本記者クラブ賞受賞。
1972年の賞創設以来、科学専門記者として初の受賞者となった。
顕彰理由を、同記者クラブサイトから引用する。


  30年以上にわたり、科学報道の第一線で精力的に取材を続けてきた。
  生命科学から宇宙論まで科学の各分野をわかりやすく解説するだけではなく、
  「科学と社会との接点」を常に意識した姿勢も高く評価したい。
  特に週1回の連載コラム「土記」は、科学的視点を踏まえながら
  人間の喜怒哀楽が伝わってくる完成度の高い内容となっている。
  

  『ゲノム編集の光と闇』など単著7冊、
  共著・共訳9冊と新聞以外でも活発な執筆を続けている。
  新型コロナウイルス問題で科学報道の重要性が再認識されている時期でもあり、
  科学報道を牽引してきた業績を顕彰したい。



2020年度日本記者クラブ賞・同特別賞受賞記念講演会 2020.7.29


ゲノム編集の光と闇 (ちくま新書)

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この記事を書くため調べていたら、
同じ毎日の科学専門記者だった須田桃子さんが3月末で退社し、
NewsPicks編集部に移籍していたことを知った。
より活躍できる場を求めての移籍のようだ。
さっそくNewsPickサイトに無料登録した。
今後の健筆が楽しみだ。


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