西村秀一『新型コロナ「正しく恐れる」』(藤原書店、2020)

クリッピングから
藤原書店PR誌月刊「機」2021年1月号(No.346)
新型コロナの行方とワクチン接種
西村秀一(国立病院機構仙台医療センター/ウイルスセンター長)


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「朝日新聞アピタル」サイトより)


『新型コロナ「正しく恐れる」』(藤原書店、2020)
著者・西村秀一に同書編者・井上亮がインタビュー。
コロナ禍の現在をどうとらえ、日々の行動に役立てるか。
参考になったので一部引用する。


新型コロナ「正しく恐れる」

新型コロナ「正しく恐れる」


  新型コロナの感染が2020年11月以降急拡大していますが、
  このような感染症はそもそも冬に増えることは避けられないのです。
  ただ日本はまだ穏やかだといえます。
  倍々で増えていく幾何級数的な増加ではないからです。
  メディアでは日々「過去最多の感染者」と報道されていますが、
  いたずらに慌てふためく状況ではありません。
  (略)


  2021年の2月までは感染者は少しずつ増加し続けるか、
  うまくいけば同じ程度で推移するでしょう。
  これからの人々の行動次第です。
  本当にいいワクチンが出てくれば状況は変わります。


  ただ、ワクチンで感染を完全に防御できるわけではありません。
  使い方にもよります。
  ワクチンは希望の星ですが万能ではない。
  ワクチンを打ったから何でも自由だ、
  といった行動を誘発すると逆効果になります。
  ワクチンを使っても冬には感染を抑えるのは難しい。
  夏に向かって徐々に減っていくという流れでしょう。
  (略)


  私たちはまったく新しいタイプの感染症に遭遇していると受け止めるべきです。
  ただ、生じる様々な社会現象は似ているので、過去から学べることはあります。
  コロナとうまく付き合っていくことです。
  (略)


  先にも言ったように、いまは戦争状態といえます。
  戦争では皆が国の指針、指導に従います。
  全体的な流れと違った視点で意見を言っても誰も聞く耳を持ってくれません。
  半ば全体主義のようになってしまいます。


  上からの全体主義の国もありますが、
  こちらは国民の側から、下からの全体主義のようになりかねません。
  何が正しいのか、各自で考えることをしないと。
  私たちはどういう社会でありつづけたいのか、
  もう一度考えるべきだと思います。
  (略)


  米国は豚インフル事件(引用者注:1976年。ワクチン挫折の歴史とされる)
  の教訓をちゃんと踏まえています。
  ワクチンを受けた人がスマホのアプリで報告できるシステムをつくりあげ
  稼働させているようです。
  日本もそうしたシステムをあらかじめ作っておくべきです。
  それで国内で何百何千万もの接種した人たちの間の副作用発生状況を知る。
  そういう賢いやり方を構築していくべきでしょう。

                   (にしむら・ひでかず/ウイルス学)


(西村の訳書)