佐藤優『佐藤優の集中講義 民族問題』(文春新書、2017/再読)


佐藤優『佐藤優の集中講義 民族問題』
(文春新書、2017)を再読する。



「あとがき」から引用する。


   本書は、私が同志社大学東京サテライト・キャンパスで、
   2015年5月から2016年2月にかけて行った
   全10回の講義記録を編集し、加除修正したものである。
   私の問題意識が明確になるので、
   当時のシラバス(講義概要)を紹介する。


   2015年春学期:ナショナリズムと国家(全5回)


   (講座の狙い)
   シリアとイラクの一部地域を実効支配する
   イスラムスンナ派過激組織「イスラム国」の活動が激化している。
   この現象は、既存の国際組織の構造を変化させる可能性がある。
   近現代の国家、国際関係の基盤となっているナショナリズム
   問題を掘り下げて考察することによって、
   現時点での世界が直面している問題の輪郭を明確にする。
   (引用者注:以下各回タイトルのみ)


   第1回 民族をめぐる二つの方法論
   第2回 スターリン民族理論の再検討
   第3回 『想像の共同体』説の限界
   第4回 心と民族の関係について
   第5回 『琉球独立論』について


スターリン全集〈第2巻〉1907-1913年 (1952年)

スターリン全集〈第2巻〉1907-1913年 (1952年)


   2016年秋学期:ナショナリズムと国家2 
   トランスクリティーク(全5回)


   (講座の狙い)
   ベネディクト・アンダーソン『比較の亡霊』と
   アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』の
   トランスクリティークを通じて、
   21世紀においてもナショナリズムが人々の心をとらえ、
   突き動かす構造を解き明かす。
   同時にアンダーソン、ゲルナー両人の
   道具主義的アプローチの限界を明確にする。
   (引用者注:以下各回タイトルのみ)


   第1回 遠距離ナショナリズム
   第2回 耐エントロピー
   第3回 資本主義と民族
   第4回 ウクライナ紛争
   第5回 沖縄の自己決定権


比較の亡霊―ナショナリズム・東南アジア・世界

比較の亡霊―ナショナリズム・東南アジア・世界

民族とナショナリズム

民族とナショナリズム


いまこうしてシラバスを読み返しても、
密度の濃い、充実した講義だったと思う。
本書を読めば全10回のエッセンスがつかめる。
僕は「漆塗り方式」で何度も復習するのに本書を使っている。
ナショナリズムを学ぶことは
現代社会の変化を読み解き、近未来を予測するのに役立つ。