社会科学

『グロテスク』と『ディスタンクシオン』(加藤晴久)

クリッピングから 藤原書店PR誌「機」2021年2月号(No.347) <寄稿>今、なぜブルデューか? 『グロテスク』と『ディスタンクシオン』 東京大学名誉教授 加藤晴久 ディスタンクシオン〈普及版〉I 〔社会的判断力批判〕 (ブルデュー・ライブラリー)作者:ピエ…

ネットに乱されない心を書物が作る(朋)

クリッピングから 週刊ALL REVIEWS Vol.85 (書評サイト/メルマガ) 2021年1月27日配信 作家/書評家の鹿島茂が2017年7月に立ち上げた インターネット書評無料閲覧サイト「All Reviews」。 趣旨に賛同したメンバー(若手が多い)が 週刊メルマガを発行し、…

石井洋二郎/鹿島茂『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』を読む(月刊All Reviews)

「カフカ・ファンド」を使ってオンライン講座を申し込んだ。 <石井 洋二郎 × 鹿島 茂、石井 洋二郎『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』を読む> (90分/税込1,650円)。 ブルデュー『ディスタンクシオン』講義作者:石井 洋二郎発売日: 2020/11/27メ…

石井洋二郎『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』(藤原書店、2020)

岸政彦さんが執筆した 「100分de名著/ディスタンクシオン」テキストで興味を持ち、連読。 石井洋二郎『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』 (藤原書店、2020)を読む。 NHK 100分 de 名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年 12月 [雑…

落ち葉の絨毯の図書室にて

近所の路地裏で少女二人がマットを敷き、 道具を並べて勉強しています。 ちゃんとおやつも用意しています。 秋の終わりと冬の始まりの間のようなひととき。 なるほど、きょうくらいの陽気なら 戸外も気持ちよさそうだなぁ。 さっそく真似して同居人の庭に椅…

依存しあうのでも突き放すのでもない、あんばい(小川さやか)

クリッピングから 朝日新聞2020年9月19日朝刊・土曜別刷り「be」 フロントランナー(Front Runner)小川さやかさん(42歳) 文化人類学者/立命館大学教授 大宅壮一ノンフィクション賞審査員を務める佐藤優さんが 称賛していたことで注目した人だった。 朝日…

副島隆彦『決定版・属国 日本論—2つの帝国の狭間で』(PHP研究所、2019)

作家・評論家の副島隆彦さんが主著と自認する著作に決定版が出た。 書店で拾い読みしたところ、主著だけあって本文には手を入れていない様子。 では図書館で借りて、あらたに書き加えた箇所だけ読むことにしよう。 副島隆彦『決定版・属国 日本論—2つの帝国…

イマニュエル・ウォーラーステイン『入門・世界システム分析』(藤原書店、2006)

著者ウォーラーステインは「はじめに」で 「本書は、世界システム分析の入門である。 なにか決定版のようなものとして世に送るものではまったくない」 と控えめに記している。(p.16) 一方山下範久「訳者あとがき」によれば 「ウォーラーステイン本人が、明…

世界のシステム全史を描く着想

クリッピングから 朝日新聞2019年9月13日朝刊 世界システム論 壮大な試み ウォーラーステインさんを悼む 川北稔・大阪大学名誉教授 ウォーラーステインが その主著『近代世界システム』第1巻を上梓(じょうし)した1974年には、 ベルリンの壁も、ソ連邦も厳…

資本主義に未来はあるか(イマニュエル・ウォーラーステイン)

クリッピングから 朝日新聞2019年9月4日朝刊 ウォーラーステインさん死去 米社会学者 「世界システム論」 近代の世界を一つのシステムとしてとらえる 「世界システム論」を提唱したアメリカの社会学者・歴史学者の イマニュエル・ウォーラーステインさんが8…

大澤真幸『社会学史』(講談社新書、2019)

全638頁。力のこもった一冊だ。 書店で見つけたときにも独特の存在感があった。 大澤真幸『社会学史』(講談社新書、2019)を読む。 社会学史 (講談社現代新書)作者: 大澤真幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/03/19メディア: 新書この商品を含むブログ…

小室直樹『奇蹟の今上天皇』(PHP研究所、1985)

社会学者・橋爪大三郎が『小室直樹の世界—社会科学の復興をめざして』 (ミネルヴァ書房、2013)に書いている。 橋爪は小室の愛弟子のひとりである。 小室博士の関心を惹きつけた人物が、戦後日本に三人いる。 昭和天皇、田中角栄、そして三島由紀夫である。…

小室直樹『親子関係は親分と子分だ』(KKベストセラーズ、1984)

小室直樹さんの本はどれを読んでも、 いまに通じる視点・論点があって明快だ。 小室直樹『親子関係は親分と子分だ—息子(娘)に脅える親に告ぐ』 (KKベストセラーズ、1984)を読む。 親子関係は親分と子分だ―息子(娘)に脅える親に告ぐ (ベストセラーシリー…

ボクたちって、生産性の低いものが好きですねー

スクラップブックから 朝日新聞2019年4月15日夕刊 地球防衛軍のヒトビト しりあがり寿 職人がこだわりで作りあげた 手づくりの味 自ら打った手打ちの麺と 3日かけて仕込んだスープでなんと750円!! そこに貴重な昼休みをつぶして 行列するボクたち… 「ボク…

小室直樹『痛快!憲法学』(集英社インターナショナル、2001)

橋爪大三郎は小室直樹の高弟であり、かつ優れた書評家である。 小室博士の著作を橋爪書評を元に (1)自分で購入するもの (2)図書館で借りるもの (3)ひとまずパスするもの、 の3カテゴリーに分けてみる。 限られた書籍購入費の運用にあたって、 この指針…

小室直樹『危機の構造ー日本社会崩壊のモデル』(ダイヤモンド社、1976)

日本の狭量なアカデミアが小室直樹の才能を受け入れなかったのは 学者小室にとっては不運なことだったかもしれない。 けれども小室ゼミ門下生、一般書読者にとっては 小室学の成果を分けてもらえたことが何とも幸運だったと思いたい。 小室直樹『危機の構造—…

小室直樹解説・山本七平『勤勉の哲学』(PHP文庫、1984 )

『小室直樹の世界—社会科学の復興をめざして』 (ミネルヴァ書房、2013)で編著者・橋爪大三郎が書いていた。 『勤勉の哲学』(引用者注:山本七平著)は1979年、 PHP研究所から出版され、その後PHP文庫に、1984年に収められた。 小室直樹博士はその解説の執…

村上篤直『評伝 小室直樹(下)』(ミネルヴァ書房、2018)

先日読んだ『数学を使わない数学の講義』が 予想以上に明晰で面白かった。 村上篤直『評伝 小室直樹(下)現実はやがて私に追いつくであろう』 (ミネルヴァ書房、2018)を連読する。 評伝 小室直樹(下):現実はやがて私に追いつくであろう作者: 村上篤直出版…

佐藤優『佐藤優の集中講義 民族問題』(文春新書、2017/再読)

佐藤優『佐藤優の集中講義 民族問題』 (文春新書、2017)を再読する。 佐藤優の集中講義 民族問題 (文春新書)作者: 佐藤優出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/10/20メディア: 新書この商品を含むブログ (5件) を見る 「あとがき」から引用する。 本書は…

民族とナショナリズムを復習している

アントニー・D・スミス『ナショナリズムとは何か』(2018)を契機に、 スミスの他の著作を読み始めた。 邦訳のある『20世紀のナショナリズム』(1995)、 『ネイションとエスニシティ —歴史社会学的考察』(1999)の2冊だ。 20世紀のナショナリズム作者: ア…

アントニー・D・スミス『ナショナリズムとは何か』(筑摩書房、2018)

こうした渋めの著作をきっちり出版してくれるのが ちくま学芸文庫のいいところだ。 前々回の金曜日・紀伊國屋書店ツアーで見つけた一冊。 アントニー・D・スミス/庄司信訳 『ナショナリズムとは何か』(原著2010/ちくま学芸文庫2018)を読む。 ナショナリ…

ヨコ社会がチベットへの道を拓いた

スクラップブックから。 朝日新聞2017年9月14日朝刊 「語る—人生の贈りもの」 社会人類学者 中根千枝(第8回) 《1945年8月15日の正午、 終戦を伝える玉音放送が流れた。 津田塾専門学校2年生だった中根さんはモンペを脱ぎ、 鮮やかな空色のワンピー…

洞察力を強化する読書筋トレ

月に一度、京橋の講義に通う。 同志社講座・佐藤優講師「キリスト教とナショナリズム2」、 第4回「エトニの存続と消滅について」。 この一年かけて、アントニー・スミスの 『ネイションとエスニシティ』を読んでいる。 ネイションとエスニシティ―歴史社会学…

佐藤優『現代の地政学』(2016)

同志社講座「キリスト教とナショナリズム」に 月一回通っているので、時間的・経済的に受講を諦めた。 早いタイミングで単行本化してもらって大変うれしい。 JALマイレージを交換したアマゾンギフト券ポイントで購入。 佐藤優『現代の地政学』を読む。 現代の…

ベネディクト・アンダーソン『比較の亡霊』(1998原著/2005)

海外で二世三世として成功した人間が 祖国でナショナリズムの活動をする人間たちに資金を提供する。 自分たちは「祖国」で暮らした経験もなく、 現在の「祖国」からは安全な異国で暮らしているにも関わらず。 この現象を「遠距離ナショナリズム」と名付けた …