クリッピングから
藤原書店PR誌「機」2021年2月号(No.347)
<寄稿>今、なぜブルデューか?
『グロテスク』と『ディスタンクシオン』
東京大学名誉教授 加藤晴久
ディスタンクシオン〈普及版〉I 〔社会的判断力批判〕 (ブルデュー・ライブラリー)
- 作者:ピエール・ブルデュー
- 発売日: 2020/11/27
- メディア: 単行本
ディスタンクシオン〈普及版〉II 〔社会的判断力批判〕 (ブルデュー・ライブラリー)
- 作者:ピエール・ブルデュー
- 発売日: 2020/11/27
- メディア: 単行本
2020年12月に放送された「100分de名著」『ディスタンクシオン』に
ブルディーの著作がある加藤晴久さんが異論を提出していた。
引用する。
桐野夏生氏の『グロテスク』だが、週刊誌連載中に部分的に読み、
何故か不思議な気懸かりに囚われ、2003年に単行本化されたとき通読した。
そして腰を抜かした。
ブルデューの『ディスタンクシオン』
すなわち「判断力の社会的批判」を小説化しているではないか!
狂言回し役の「わたし」は、
自分を含む登場人物たちが通う「Q女子高」(≒慶應女子高)について
「日本にも実はしっかりと存在する階級社会を具現化」している、と書いている。
(略)
経済資本によって以上に、
象徴資本の質と量によって構造化されたQ女子高というミクロコスモスで、
外部から闖入した異分子が選びうる戦略は二つある。
ひとつは、同化を断念し異分子としての存在に甘んずること。
「最初から勝負を降りて変人になる」のである。
「わたし」はこの道を選んだ。
第二の戦略は、学業面で抜群の成績を収めること。
しかも、ごく自然に。つまり、そのために努力している、
「シコ勉」している気配は少しも見せずに。
ミツルはこれを選んだ。
第三、しかしこれは戦略ではない。
「わたし」の妹のように、「怪物的な美貌」に恵まれること。
ユリコは何の努力もせずにチアガール部のスターとして
学内外でチヤホヤされた。
(略)
昨年12月に放送された「100分de名著」『ディスタンクシオン』は、
『グロテスク』を素材に制作されるべきであった。
そうすれば視聴者は『ディスタンクシオン』
つまり「判断力の社会的批判」を自分のこととして理解したであろう。
(略)
- 作者:桐野 夏生
- 発売日: 2006/09/05
- メディア: 文庫
- 作者:加藤 晴久
- 発売日: 2015/09/11
- メディア: 単行本
同誌小欄「書店様へ」(営業部)は、
同社刊『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』(2020)の反響に触れている。
1/16(土)には、「月刊All Reviews」オンラインイベントにて、
著者石井洋二郎さんが鹿島茂さんと対談。
テレビ番組が投じた一石の木霊(こだま)の重なりに
僕も耳を傾けている。
NHK 100分 de 名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年 12月 [雑誌] (NHKテキスト)
- 発売日: 2020/11/25
- メディア: Kindle版