チャチャココとチャチャココと卵溶きほぐし(田中澄子)

クリッピングから
讀賣新聞2021年2月22日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌4首、抜き書きします。


  軒先に吊るす何かがないからだ
  秋がこんなに曖昧なのは

         川崎市 岡奎那


     【評】干し柿。あるいは大根。
        軒先に吊(つ)るされるものたちは、
        季節を示す旗のようなもの。
        自然と共に生きる場面の少ないことへの違和感が、
        柔らかく伝わってくる。


「何かがない」ことの存在感を感じます。
ちなみに我が家の同居人は、
厳寒の2月、物干しでモチを干します。
おやつの揚げモチを作るのです。


  チャチャココとチャチャココと卵溶きほぐし
  朝のキッチン目覚めてゆきぬ

           船橋市 田中澄子


     【評】独特のオノマトペが秀逸だ。
        卵を溶く器と菜箸の質感までもが伝わってくる。


僕も万智さんの評に同感しました。
確かにあの音、「チャチャココ」と聞こえる。
よくこの言葉を見つけたなぁ。
繰り返しが効いてますね。


  静謐の謐の字みたいにそこでしか
  見ない君がいた町の図書館

       東京都 山形さなか


ほのかな恋心…なんでしょうか。


  本棚の下から謎のガラス片
  悪意っていつもちょっとだけ綺麗

        本庄市 北城椿貴


悪意が綺麗って面白い。


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