ネットに乱されない心を書物が作る(朋)

クリッピングから
週刊ALL REVIEWS Vol.85 (書評サイト/メルマガ)
2021年1月27日配信


作家/書評家の鹿島茂が2017年7月に立ち上げた
インターネット書評無料閲覧サイト「All Reviews」。
趣旨に賛同したメンバー(若手が多い)が
週刊メルマガを発行し、交代で巻頭言を寄せている。


  昨年末、私のTwitterのタイムラインに
  ものすごい勢いで流れ込んできた本がある。
  ブルデューの『ディスタンクシオン』だ。


  40年以上も前の、しかも「超難解」とされている本が
  なぜこれほど話題になっているのだろうと不思議に思ったら、
  名著をわかりやすく解説するEテレの番組
  「100分de名著」で取り上げられて“バズった”らしい。
  社会学者の岸政彦さんによる解説はNHKテキストとして入手できる
  (ちなみに今AmazonではKindle版がセール価格で販売中)。
  (略)


  「稲妻の一撃」と信じて疑わなかった
  本や音楽との感動的な出会いの否定に始まり、
  教養や趣味は生まれによって限定されるという絶望的な状況も、
  今の社会情勢を見るにつけ腑に落とさざるを得ない。
  (略)


  同じ景色を見ているはずなのに、なぜわかってもらえないのか…
  と頭を抱えることも苦痛も
  『ディスタンクシオン』は和らげてくれるのだろうか
  (略)


  まずはこの素晴らしい入門編
  『プルデュー「ディスタンクシオン」講義』から読んでみるのはどうだろう。
  少なくとも『ディスタンクシオン』が何について書かれた本で、
  何を問題として取り上げているのかが、講義形式でよくわかる。


  昨年刊行された本ということで、
  コロナ禍でよりあからさまになった
  格差社会日本への含意とも受け取れて大変面白い。
  外出自粛要請、リモートワークの推奨で、
  リアルに人と会って話すことがますます難しくなっている昨今。


  さまざまな流言飛語が飛び交い、
  虚と真が組んずほぐれつするネットに乱されることのない心は、
  きっと確かな書物がつくってくれるのだと思う。(朋)


ブルデュー『ディスタンクシオン』講義

ブルデュー『ディスタンクシオン』講義


2021年1月16日にライブ配信されたオンライン対論
<石井洋二郎X鹿島茂『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』を読む>
YouTubeで有料公開された(税込1,650円)。


東大仏文同窓の二人が初めて対論。
分からないことを分からないと率直に石井にぶつける鹿島の姿勢が素晴らしい。
ブルデュー入門者の僕には道標になった。