石井洋二郎『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』(藤原書店、2020)

岸政彦さんが執筆した
「100分de名著/ディスタンクシオン」テキストで興味を持ち、連読。
石井洋二郎ブルデューディスタンクシオン」講義』
藤原書店、2020)を読む。


ブルデュー『ディスタンクシオン』講義

ブルデュー『ディスタンクシオン』講義


「あとがき」から引用する。


  ブルデューの『ディスタンクシオン』は、
  全訳の刊行からもう三十年たっているのに
  今でも版を重ねている例外的なロングセラーだが、
  若い読者にはいささか値が張って入手しにくいので、
  そろそろ普及版を出したいと思っている、
  そこでこれを機会に一般読者向けの入門書を書いてみないか
  ーそんな話を藤原良雄氏(引用者注:藤原書店社主)からいただいたのが、
  本書執筆のきっかけでした。


  私は一九九三年に『差異と欲望』という解説書をすでに出しており、
  だいたいのことはそこで述べたつもりだったので、
  もう書くべきことは残っていないのではないか、
  書いたとしても結局は旧著の繰り返しになってしまうのではないかと、
  正直のところ、若干の躊躇を覚えなかったわけではありません。


  けれども世紀が替わって社会は大きく変容を遂げ、
  わが国の経済状況も文化状況もその様相を一変しています。
  とりわけ「格差」や「不平等」の拡大が
  何かにつけて話題になる昨今の状況を踏まえてみれば、
  まさに今、ブルデューがこの書物にこめたメッセージを
  あらためて検証してみることには
  少なからず意義のあるのではないかと考えて、
  この仕事をお引き受けした次第です。


  執筆にあたって「です・ます」調の講義という形式を採用したのは、
  自分の言葉が過不足なく読者に伝わるかどうか、
  消化不良を起こさずにじゅうぶん咀嚼してもらえるかどうかを常に意識しながら、
  できるだけ聞き手に寄り添った文体で書こうと思ったからです。

                            (pp.287-288)


久しぶりに紀伊國屋書店新宿本店に寄り、
出たばかりの『ディスタンクシオン』(普及版)を探したところ、
本書も一緒にワゴンに平積みされていた。
「100分de名著」12月に取り上げられた機会を逃さず、
書店も連動していたのだ。
パラパラと立ち読みしたところ、意外に読みやすく、
かつ訳者自身の解説書だったことに興味を持ち、併せて購入。


読んでいくうちに石井先生のバーチャル講義に出席できたようで、
本当に楽しめた。
番組はあと3回続く。
岸先生がどうアプローチし、それに伊集院光、安倍みちこアナがどう反応するか。
國村隼の朗読ではどの箇所を読むか。
二倍三倍に名著を楽しめる、僕なりの味わい方なのだ。