敗者にも勝者にもドラマがあった竜王戦

クリッピングから
讀賣新聞2020年12月7日朝刊
豊島 4度目の正直 タイトル初防衛
第33期竜王戦(主催=読売新聞社日本将棋連盟


カメラマンにとってシャッターチャンスは
投了を告げた羽生九段が頭を下げた一瞬だったのだなと思う。
敗れてなお華があるのがさすがだ。


  将棋界最高峰の竜王戦で、豊島将之竜王(30)は
  第5局で念願のタイトル初防衛を果たした。
  平成の覇者として君臨した羽生善治九段(50)を破っての防衛は、
  令和の将棋界の主役のひとりであることを強く印象づけた。
  6日午後6時25分、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」。
  羽生九段がハッキリした声で投了を告げた時、
  豊島竜王は相手に合わせて頭を下げた。
  (略)


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(撮影:若杉和希)


一方、初防衛に成功した豊島竜王について
記事は丹念に追っている。
そこにもう一つのドラマがあった。


  小学3年生で棋士養成機関の「奨励会」に入り、
  16歳でプロ入りした豊島竜王は、「早熟の天才」の呼び声が高かった。
  だが、タイトルは遠かった。
  28歳での初戴冠(たいかん)まで4度の挑戦に失敗。
  20歳代半ばには「タイトルに縁がないまま終わる棋士人生か」
  と悲観的になった。


  タイトル獲得の常連になっても3回にわたって防衛に失敗した。
  最近は「タイトルは防衛して一人前」と、
  将棋界での格付けを示す言葉が心に引っかかっていたという。


  棋力を高めるため、
  将棋ソフトを活用した勉強をいち早く取り入れるなど、自己改革に努めた。
  今回の初防衛はその結果だ。
  豊島竜王の経歴を見ていると、実は「大器晩成」なのではないかと思う。
  (略)


  羽生九段にとって、
  今回の七番勝負が4回目の「通算タイトル100期」への挑戦。
  惜しくも大記録を達成できず、「細かい所でミスがあった」と話した。
  今年で50歳となった羽生九段は「50歳なりの将棋をお見せできれば」
  とシリーズ開幕前に話していたが、
  「久しぶりの2日制でしたけど、充実して指せたかと思います」と振り返った。
  (略)

                           (文化部 吉田拓也)


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