より強くなって新しい景色を見たい(藤井聡太)

クリッピングから
NHKウェブサイト2020年7月22日
藤井聡太棋聖インタビュー 「将棋に頂上はない」


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この人の笑顔、快挙に救われている人は多いんじゃないかな。
僕もそのひとりです。
初タイトル獲得直後のインタビューです。


 (略)
  Q.新型コロナウイルスの影響で、
    ことし4月からおよそ50日にわたって対局が中断しました。
    この期間はどのように将棋と向き合いましたか。


  A.今までの方法を特別大きく変えたことはなかったのですが、
    しばらく対局が空いたことで、
    よりじっくりと1つの課題に向き合うことができました。
    やはり対局があると、そのことを意識せざるを得ない面がありますので、
    まとまった時間でじっくりとできたことがよかったと思います。


  Q.自分の将棋を見つめ、どんなことに気がつきましたか。


  A.これまでの自分の対局、特に負けてしまった対局を振り返ると、
    中盤でミスが出て途中から差をつけられてしまう展開や、
    中盤から終盤の入り口で相手に後れを取ってしまう展開が多いと思ったので、
    そこを改善したいと思いました。


  Q.それをどのように克服したのでしょうか。


  A.自分の傾向として、判断に迷ったときに
    1つの読み筋を深く掘りすぎてしまうところがあると思ったので、
    適当なところで読みを切り上げて形勢判断に移ることや、
    局面によっては、なるべく多くの手を拾って読むことを意識しました。


  Q.今回の五番勝負の中では、
    第2局の「3一銀」や、第4局の「8六桂」など、
    周囲が驚く手も登場しました。
    こうした手はどのようにして見つけるのでしょうか。


  A.中盤では、なるべく多くの手を拾って考えるということ、
    あるいは終盤では、形に頼りすぎずに読みを入れる
    ということを意識しているので、
    そういった自分の特徴から出たところがあるのかなと思います。


  Q.意表を突こうという狙いはない。


  A.はい、そういったことは特にないですね。
    どの局面であっても自分なりにしっかりと考えて、
    いいと思った手を指したいと考えています。


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  Q.トップ棋士が相手の対局も増えましたが、
    経験の差を痛感するようなこともありますか。


  A.トップの方と対戦すると、
    自分には気がつかない好手を指される場面が多いので、
    やはりそこは自分の課題と言えると思います。
    ただ、そういうところから学んで改善していくことは可能だと思います。
    対局を通して得られる相手の感覚を
    自分なりに解釈して取り入れていけたらなと思っています。
   (略)


  Q.藤井棋聖がプロ入り当時に書いた色紙には、
   「最強の棋士」という目標が書かれています。
    今、この目標にどこまで近づけたと思いますか?


  A.将棋は、どこまで強くなったとしても終わりがないと思っていて、
    そういう意味では、本当の意味での頂上というものもないのかなと思います。
    四段になった当初の色紙ということで懐かしいんですが、
    なかなかいい目標だなと思ったので、
    引き続きこの目標を胸に頑張っていきたいと思います。


  Q.今後長期的な視点で、藤井棋聖が目指す棋士像はありますか。


  A.将棋界には、谷川先生、羽生先生、渡辺先生といった
    本当にすばらしい先輩方がおられますので、
    そういった方の姿勢を勉強しながら、
    より多くの方に将棋の魅力を伝えられるようになりたいなと思っています。


  インタビューの最後、
  棋士としての今後の心構えについて、色紙に一筆を求めました。
  藤井棋聖が記したのは、
  タイトル獲得翌日の記者会見でも見せた『探究』ということばでした。


  Q.「探究」ということばには、どのような思いを込めていますか。


  A.タイトルを取ったときに「探究」と書いたんですけど、
    やはりその思いは今でも変わらないというか、
    将棋というものはすごく深いゲームなので、
    探究心を持って取り組みたいという思いは変わりません。


  Q.プロ入り当時に書いた「最強の棋士」の目標と、今記した「探究」。
    思いに変化はあるのでしょうか。


  A.棋士になってから4年弱がたちますが、
    多くの対局を通していろいろな新しい発見がありましたし、
    将棋の奥深さを感じる機会が多かったと思うので、
    これからも盤上に対して探究心を持って、
    引き続き取り組んでいきたいと思っています。


  Q.その探究心こそが、
    目標である「最強の棋士」につながっていくのかもしれませんね。


  A.そうですね。
    より強くなって新しい景色を見たいという気持ちは、
    当時も今も変わらないと思っています
   (略)


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棋聖が名前を挙げた谷川九段、羽生九段、渡辺二冠、木村王位らには
先達として立ちはだかり、ぶ厚い壁となってほしい。
そうすれば18歳になったばかりの俊英はまだまだ強くなるだろう。
そして同年代、さらに若い年代から
棋聖の存在を脅かす棋士が登場してほしい。
ライバル同士の熱戦から、
AIがいまだ記憶していない棋譜が次々生まれることを望む。
(写真はNHKサイトから転載。インタビュー全文はこちらをどうぞ)