大城立裕「辺野古遠望」—短編集『あなた』(新潮社、2018)収録


スクラップブックから
朝日新聞2018年10月4日朝刊
同化と異化 揺れる沖縄の心
沖縄初の芥川賞作家・大城立裕さん



   沖縄初の芥川賞作家で、
   戦前戦後の沖縄を見つめた私小説風の短編集
   『あなた』(新潮社)を出した大城立裕さん(93)に、
   本土との関係を聞いた。
   (略)


   「本土への同化と異化のはざまで揺れているのが
   沖縄の心ではないでしょうか」
   そのせめぎ合いの「極点」として、
   基地移設を巡る葛藤を描き出したのが
   収録作の「辺野古遠望」。
   私小説の趣が強い他の5編と異なり、
   「ほぼフィクション。足が悪くて現場に行けませんので」。
   

   作中では、主人公のおいが営む建設会社が、
   防衛省発注の辺野古の工事を落札してしまう。
   沖縄出身の防衛省職員と、
   同じ地元出身の反対派市民の衝突を目の当たりにするおい。
   本土から見れば「基地容認派」とひとくくりにされそうな
   彼の苦悩と、その姿を見つめる主人公の心情を描いた小編だ。


   主人公はおいに<我慢して続けるほかはない>と助言する。
   <(我慢して続けるのは)工事だけなく、
   ヤマトとの付き合いのすべて……歴史のすべて>とも。
   (略)

                       (上原佳久)



9月30日投開票で
名護市辺野古新基地建設に反対した玉城デニー氏が
沖縄県知事に初当選。
笑顔の先に日米両政府相手の茨の道が予想される。
日本政府が交付金の蛇口をきつく締めれば
経済発展を望む県民から不満の声も出るだろう。


沖縄の声に虚心に耳を傾け続けることは
ヤマトンチュの僕にもできる。
大城立裕作品はその足掛かりになる気がした。



小説 琉球処分(上) (講談社文庫)

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