少しずつ黄を足しながら晩秋の(小林真希子)

クリッピングから
讀賣新聞2020年12月7日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、抜き書きしてみます。


  少しずつ黄を足しながら晩秋の
  風が仕上げる銀杏の並木

      平塚市 小林真希子


自分だったら「黄を足しながら」がなかなか書けません。
銀杏の黄の鮮やかさを変化で捉える作者の視点が素晴らしいな。


  難しき漢字そぐわずふくらみの
  やさしきれもん手に包むとき

       たつの市 七條章子


そうです、そうです。
檸檬」と書くと同じ果実なのに印象ががらりと変わりますよね。
「レモン」でもなく「れもん」を見つけたのが素敵だな。


  病いから回復すれば遠ざかる
  病む人が今見つめる景色

       東京都 室伏圭子


病んでいるときあれほどくっきり見えていたはずの景色が
回復したことでかえって見えなくなっていく。
それはもちろんよかったことではあるけれど、
大切な記憶を失ったことでもあるのかな。


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短歌ください (角川文庫)

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(最近、読み始めました。ユニークな歌、多し!)