クリッピングから
讀賣新聞2020年12月7日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週も好きな歌3首、抜き書きしてみます。
少しずつ黄を足しながら晩秋の
風が仕上げる銀杏の並木
自分だったら「黄を足しながら」がなかなか書けません。
銀杏の黄の鮮やかさを変化で捉える作者の視点が素晴らしいな。
難しき漢字そぐわずふくらみの
やさしきれもん手に包むとき
そうです、そうです。
「檸檬」と書くと同じ果実なのに印象ががらりと変わりますよね。
「レモン」でもなく「れもん」を見つけたのが素敵だな。
病いから回復すれば遠ざかる
病む人が今見つめる景色
東京都 室伏圭子
病んでいるときあれほどくっきり見えていたはずの景色が
回復したことでかえって見えなくなっていく。
それはもちろんよかったことではあるけれど、
大切な記憶を失ったことでもあるのかな。
- 作者:穂村 弘
- 発売日: 2020/09/24
- メディア: 文庫