縁側を貸す下町暮らし(芍薬)

クリッピングから
讀賣新聞2020年10月5日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


好きな歌を抜き書きします。
今週は4首ありました。


  青きまま椎の実ひとつ落ち来たり
  小さき秋の速達のごと

         狭山市 奥薗道昭


     【評】熟すことなく、まるで生き急ぐように
        落ちてきた椎(しい)の実。
        おまえは何を伝えたかったのか…
        「速達」の比喩が新鮮だ。


万智さんの評が奥薗さんの歌と対話しているようです。
限られた文字数でのお二人のコミュニケーションを
その傍らで味わいました。


  ひっそりと夜明けの空が打ち明ける
  秘密のように聞いている雨

           平塚市 小林真希子


寝床で聞くともなく聞こえてくる雨音。
そうか、あれは夜明けの空が打ち明けていた
秘密の言葉だったのか。


  気まぐれな野良猫を寅さんと呼び
  縁側を貸す下町暮らし

          千葉市 芍薬


芍薬さんの暮らす下町の風景を想像します。
いまどき野良猫が棲息できる町は、ホッとします。
我が家の近所でもめったに見かけることがありません。


  「早い」「うまい」褒められ給料安ければ
  牛丼屋に似る我の働き

           四日市市 群青更紗


上司のおだてには乗らないぞ…
群青更紗さんのちょっぴりシニカルな視点が
僕は気に入っています。


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下線部クリックで
これまでデジタルノートに書き込んだ同じ作者の歌が読めます。
複数の作品に触れると、
それぞれの方の作風が伝わってくるようです。


てにをは俳句・短歌辞典

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(手元に置いて、ときどき参照してみたい新刊)