犬がいるんだ春の日なたに(芍薬)

クリッピングから
讀賣新聞2022年5月2日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  今はもう過去形でしか話せない
  犬がいるんだ春の日なたに

          千葉市 芍薬


    【評】上の句で「犬は死んだのだな」と思い、
       第四句で「思い出しているのだな」と感じる。
       そして結句で、ふいに犬が現れる。
       「いるんだ」の意味合いの鮮やかな転換。
       過去と現在の混ざる感じが魅力だ。


自分が記憶している限り
愛した犬はいまもそこで生きている……
そう信じたい気持ちになります。


  見上げてる私がいても
  見上げない私がいても空は青空

        守口市 小杉なんぎん


そこに青空が広がっているのに、
何かに心が占められていると気づかない。
そんなこと、僕にもあります。


  茹であがる湯気のむこうのファルファッレ
  耳たぶほどのやわらかな午後

        埼玉県 玖嶋さくら


ファルファッレは蝶のかたちのパスタなんですね。
なんだか、ホッとさせてくれる歌です。



万智先生の評を読んだ後で
同じ歌をもう一度読み返すと
味わいの深さが変わるようにいつも感じます。