人生の下り坂を生きていくのが、楽しみになった(鎌田實)

クリッピングから
毎日新聞2022年5月2日朝刊
「さあ これからだ」(鎌田實)ー186ー
老いを手なずける日々


  昨年春先から、不整脈のひとつである心房細動が
  時々起こるようになった。
  抗不整脈剤でコントロールしようとしたが、
  なかなかうまく治まらなかった。


  「心臓の老化ですね」と循環器科の主治医。
  元気に飛び回ってきたが、不意に足をすくわれた。
  これが老いの始まりか、と思った。
  4日間入院して、カテーテルによる心筋焼灼(しょうしゃく)術
  (アブレーション)という手術を受けた。
  (略)


  まずは、心房細動が起こらないよう
  腹式呼吸を意識して行うようにした。
  ぼくは「がんばらない」なんて言いながら、実はがんばり体質。
  交感神経が優位に動きがちだったと思う。
  これを反省して、ウォーキングのときなどに腹式呼吸を組み込んだ。
  心臓の機能に問題はないと主治医から言われたので、筋トレも再開した。
  (略)


  60歳を過ぎたら、子育て、ローンの返済、会社での役割……
  そういうものから解放されて、自由な時間を持つことができる。
  過去の自分と比べなければ、もっと自由に生きられる。
  そう、自由こそ老いの特権なのだ。
  そう気づいたら、人生の下り坂を生きていくのが、楽しみになった。
  (略)



鎌田先生が「がんばり体質」なのは
読者はみんな知ってますって。
バレてないと思っているのは先生だけ(笑)。
でも、がんばっている先生に
「がんばらない」と言われて少しホッともしてるんです。