その緑の輝きは実在する(俵万智)

クリッピングから
讀賣新聞2022年2月15日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週好きだった3首、抜き書きします。


  AIは例えていえば無果汁の
  メロンソーダの輝く緑

       東京都 武藤義哉


    【評】AIは何かの替りであることを越えた存在感を持っている。
       「例えていえば」はよほどの説得力がないと使えないが、
       充分に資格のある比喩だ。
       本物以上に身近なメロン感のあるソーダ
       その緑の輝きは実在する。


  マスクにて曇る眼鏡で踏み出せば
  濃霧の海の漂う小舟

        仙台市 小野寺健


    【評】客観的には眼鏡が曇っているだけなのだが
       (そして本人もそれは承知で)
       あえて詩情たっぷりに主観で捉えた下の句が面白い。


  ヒコーキだ青空見上げ指をさす
  音もないのに気づく二歳児

          神奈川県 井上正


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