ぶちかましたい右ストレート(岡奎那)

クリッピングから
讀賣新聞2021年10月4日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週も好きな歌3首、抜き書きします。


  退院後なに食べたい?と皆が聞く
  まず欲しいのは口紅なのに

      ふじみ野市 古田つむぎ


    【評】何を入院生活の不自由と思うかは、人それぞれだ。
       多くの人が食事と考えるようだが、作者は違った。
       同じ口にまつわることであるところが、皮肉だ。


  文学が廊下の奥に立ってたら
  ぶちかましたい右ストレート

         川崎市 岡奎那


    【評】渡辺白泉の「戦争が廊下の奥にたってゐた」を踏まえた一首。
       知らず知らずのうちに
       文学っぽい表現をしてしまうことへの自戒と読んだ。
       勢いのある下の句が魅力だ。


  帰らないと決めれば町はふるさとの
  ような横顔を見せてくる

          大阪市 toron*


    【評】関係ないとなると、いいところばかりが見えてくる。
       優しさの象徴として、ふるさとという語が効いている。


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今週は万智さんが【評】を付けた3作と、
自分で選んだ3作が一致しました。
作品と評を交互に読み返し、
自分なりに味わう楽しみを覚えました。