クリッピングから
讀賣新聞2021年6月28日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週も好きな歌、抜き書きします。
何処かしら欠けた花火を眺めやる
都会の夏の空は縦長
【評】ビルの間から打ち上げ花火を見ているのだろう。
花火ではなく、その背景となる空を捉えた
「縦長」が印象的だ。
花火の曲線を、直線で切り取るのが都市なのである。
町内の小さき小さきパスタ屋の
時短を告ぐる大き貼り紙
【評】繰り返される「小さき」に、
必死で耐えている店への労(いたわ)りが感じられる。
負担の重さを象徴するかのような貼り紙だから、
大きく感じられるのだ。
わたしにもトイレの紙の芯のごと
御礼を骨に書いておきたい
【評】使い終わったトイレットペーパーの芯に、
お礼が印刷されていた。
そのように自分の骨にも……
という発想がユニーク。
今週はもう一首。
メロンパン残しておくのをやめました
子離れはいつも傍らにある
国立市 武井恵子
「メロンパン」と「子離れ」を結ぶなんて
僕にはまったく思い付かない!
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