このひとに今日わたしはふられる(木村槿)

クリッピングから
讀賣新聞2021年5月10日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、抜き書きします。


  もう二度と会わないきみを見送った
  この目がPASMOの残高を見る

         東京都 近藤ゆみ


    【評】恋の終(おわ)りを見届けるのも目なら、
       金銭という現実を確かめるのも目だ。
       失恋後にも続く現実。
       PASMOという具体が効いている。


失恋の歌をもう一首。


  カステラの紙をじょうずに剥がすひと
  このひとに今日わたしはふられる

          名古屋市 木村槿


「ふられた」ではなく「ふられる」と結ぶことで
過去でなく未来を描写しているような余韻を残せると知りました。


  記憶ごと解体された更地から
  明るく咲いた花の声する。

         東近江市 河口香


近所でも工事のために更地になった場所があります。
母子連れが自転車でその脇を通り過ぎるとき、
咲いている花を見て「キレイ」と子どもがつぶやきました。
(下線部クリックで、同じ作者の別の作品が読めます)



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