七の引き算すらりと言えた(池田敏子)

クリッピングから
讀賣新聞2021年2月8日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、抜き書きします。


  一円の合うまで残業したころは
  七の引き算すらりと言えた

        東大阪市 池田敏


     【評】電子化されていない頃の会計係の仕事だろうか。
        七の引き算は認知症のテストなどでも使われる。
        一円や七の具体性が効いている。


なんて肩に力を入れずに歌を詠める方なんだろう。
いざ自分で作ってみようとすると、
こうはいかないんだよなぁ。


  麦の葉のあをみづみづし少しずつ
  われのペースを取り戻したり

        市原市 井原茂明


後半の句に励まされました。
そうか、自分のペースを
少しずつでも取り戻せばいいんだ。


  車内にてカバーもつけず罪と罰
  <下>を読むひとはあまり揺れない

         川崎市 からすまぁ


見る人、見られる人。
スマホが介在しない車内空間の他人同士。
<下>まで見つけて詠んだ作者の観察力が効いてます。


f:id:yukionakayama:20210211194046p:plain