佐藤優さんの講義録は毎回中味が濃く、
受講生とのやりとりの臨場感まで活字化されていて読み応えがある。
佐藤優『新世紀「コロナ後」を生き抜く』(新潮社、2021)を読む。
- 作者:佐藤 優
- 発売日: 2021/01/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
「まえがき」から引用する。
本書の目的は、
英国の歴史学者エリック・ホブズボームの歴史書『20世紀の歴史』、
アルベール・カミュの小説『ペスト』という
国際的に定評のあるテキストの読み解きを通じて、
今、世界と日本で起きている出来事の本質を自分でつかむ力をつけることだ。
(略)
本書は2020年5月30、31日にリモートで行われた
新潮講座での講義を基にしている。
緊急出版などといった形ですぐに活字化しなかったのは、
あまりにノイズの多い情報や言説が流布されていたので、
それらとは一線を画したかったためだ。
(略)
本書をていねいに読んでいただければ
カイロスとなる「時の徴(しるし)」を
的確につかむことができるようになる。
現在と未来を正しく予測するために
20世紀の歴史を振り返る必要があるのだ。
『20世紀の歴史』はホブズボームが
ニューヨークのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで
大学院生相手に行った講義録だ。
明晰な分析、筆致に感心した記憶があったので、
その本を題材に佐藤さんがどんな講義をするか、楽しみだったのだ。
リモートで参加しているみなさんは
とても熱心で、知識も豊富な印象だ。
佐藤さんから質問が飛んできても、
あわてずしっかり答えているのが見事だ。
おかげで活字で参加している僕も、
自分の考えをまとめながら読み進めることができる。
(新潮社サイトより/表紙は尾崎世界観)
本書は新潮社のPR誌「波」2021年2月号に
古市憲寿さん(作家/社会学者)が力のこもった書評を寄せている。
佐藤さんの講義、受講生のみなさんとの双方向のやりとり、
そして古市さんの書評。
それらを合わせ読んでいると、
講義がポリフォニーのように立ち上がってくる。
自宅にいながらにして、
書籍代1,650円+「波」購読料(1年分)1,000円のみで味わえる、知の至福。
- 作者:ホブズボーム,エリック
- 発売日: 2018/06/08
- メディア: 文庫
- 作者:ホブズボーム,エリック
- 発売日: 2018/07/06
- メディア: 文庫
- 作者:カミュ
- 発売日: 1969/10/30
- メディア: ペーパーバック