エリック・ホブズボーム『20世紀の歴史』(ちくま学芸文庫、2018)


ニューヨークのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ
講義を聴けた大学院生たちはなんと幸運だったのだろうと思う。
その講義の集大成が新訳で帰ってきた。
エリック・ホブズボーム『20世紀の歴史—両極端の時代』
上下二巻(ちくま学芸文庫、2018)を読む。


20世紀の歴史 上 (ちくま学芸文庫)

20世紀の歴史 上 (ちくま学芸文庫)

20世紀の歴史 下 (ちくま学芸文庫)

20世紀の歴史 下 (ちくま学芸文庫)


これほど俯瞰的で、
かつ細部まで濃密な20世紀史を読んだ記憶が僕にはなかった。
取り上げた時代は違うが、
ヘーゲル『歴史哲学講義』を読んだときの
論旨の明晰さを思い浮かべた。


歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)

歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)


ホブズボームの名前は
同志社講座でナショナリズムの勉強をしているときに
たびたび耳にし、目にした。
いつか読もうと気になっていた人だった。


金曜日の紀伊國屋ツアーで
あるとき新刊文庫平積みコーナーで上下巻を見かけ、
パラパラ眺めたのが手にしたきっかけだ。
政治、経済、文化まで
気の遠くなるほどの文献・資料を元に
ホブズボーム独自の20世紀観が語られる。
ひねりの利いた、皮肉なユーモアが時折混じるのが堪らない。


訳文がこなれていて読みやすいのは
訳者・大井由紀が
南山大学国語学英米学科准教授であるためか。
巻末に索引・参考文献と並んで
筆者自身による「読書案内」があるのがなんともうれしい。


冒頭はこうだ。


   歴史家ではないがもっと知りたいという読者のために
   いくつか提案させていただく。
                     (下巻 p.593)


A History of the Modern World

A History of the Modern World

(ホブズボームが「読書案内」で薦める大学生向け教科書)


「読書案内」の締めくくりを読んで、
またニンマリする。


   読者諸氏は、
   自信満々の文献の論調(筆者自身の見解も含め)に惑わされ、
   実証された真実と意見を混同しないよう気をつけていただきたい。
                       (同 p.600-601)


文庫二巻で1,200ページを超える大作である。
この本は購入して身近に置き、たびたび参照しようと思う。


編集: 天野裕子、増田健史、北村善洋(筑摩書房


Age of Extremes: The Short Twentieth Century, 1914-91

Age of Extremes: The Short Twentieth Century, 1914-91

ナショナリズムの歴史と現在

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  • 作者: E.J.ホブズボーム,E.J. Hobsbawm,浜林正夫,庄司信,嶋田耕也
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2001/03/19
  • メディア: 単行本
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三省堂から出ている旧訳・河合秀和訳はこの二冊)
wikipedia:en:Eric Hobsbawm