100分de名著/三島由紀夫『金閣寺』(講師:平野啓一郎)

クリッピングから
NHKテキスト「100分de名著」2021年5月
三島由紀夫『金閣寺』(小説家/平野啓一郎)
(放送:Eテレ月曜日 午後10:25〜10:50)


著作権の問題なのか、今月は電子版の発行はなく、ムックのみの販売)


「はじめに/三島の問いを受け止め直す」から引用する。


  彼は1970年11月25日、45歳で自決しますが、
  作家として最も充実していたのは30代前半でした。
  本作は、膨大で多彩な三島作品の中でも
  最高傑作であると僕は考えています。
  (略)


  金閣放火という事件の枠組みを使い、
  その中で、事件に触発された三島自身の思想を展開する。
  これが創作の動機だったようです。
  (略)


  読んで、非常に感動しました。
  まず魅了されたのが文体です。
  きらびやかで、レトリックが華麗です。
  その人工性が好きになれないという読者もいるようですが、
  僕は強く惹かれました。
  (略)


  そこから他の三島作品を手当たり次第に読んでいったのですが、
  最初の出会いが『金閣寺』でなかったら、
  こんなにも三島にのめり込むことはなかったかもしれません。
  (略)


  僕自身、これまでに書いた三島の作品論をまとめた
  単行本を準備しています。


  ところで、三島の衝撃的な死から半世紀が過ぎた今、
  改めて三島の代表作『金閣寺』を読む意味はどこにあるのでしょうか。
  ひとつには、三島が拘(こだわ)り続けた
  「言葉と現実の合致」の意味を改めて考えるということが挙げられます。
  (略)


  また、戦後に三島が抱えた問いと苦悩を
  追体験することにも大きな意義があります。
  三島の一番大きな問いは、
  寄る辺ない戦後社会をどう生きていくべきかでした。
  (略)


  価値観の大転換が起こった戦後社会に投げ出された
  三島の苦悩を追体験し、
  「生きる」という決断に至るプロセスを見ることは、
  僕たちに様々な示唆を与えてくれるに違いありません。

                     (pp.6-8)


2020年7月放送の吉本隆明『共同幻想論』(講師:先崎彰容)から
「100分de名著」のテキストを購入し、視聴している。
自分がこれまで未開拓だった読書領域に
案内役の講師の方々に誘われ、逍遙するのが面白い。
三島もその一人だ。


目次は以下の通り(各回は放送と連動)。


  第1回 美と劣等感のはざまで
  第2回 引き裂かれた魂
  第3回 悪はいかに可能か
  第4回 永遠を滅ぼすもの


f:id:yukionakayama:20210513113457p:plain:w200
NHKサイトより)


ところで、番組で見かける平野講師のファッションがとてもいい。
第2回では真っ黒なシャツに花びら模様が似合っていた。
女性ファンが多いのも無理はない。


金閣寺 (新潮文庫)

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