Eテレ「100分de災害を考える」(若松英輔)

3月のEテレ「100分de名著」
「100分de災害を考える」と題したプログラム。
批評家/東京工業大学教授の若松英輔
名著四冊を選書し、読み解いていく。
僕たちが見失いかけている「つながり」を取り戻す試みだ。



NHKテキスト2021年3月
「はじめに 危機の時代を生きるために」から引用する。


  二〇一一年三月十一日、大地震と巨大津波が東日本一帯を襲い、
  多くの人びとのいのちを、日常と故郷を奪いました。
  (略)


  災害が私たちに突きつけたのは何だったのか。
  そのことをあらためて考えるために、今回は四冊の名著を読んでいきます。
  寺田寅彦の『天災と日本人』、柳田国男の『先祖の話』、
  セネカの『生の短さについて』、池田晶子(あきこ)の『14歳からの哲学』。
  著者もテーマも異なりますが、
  いずれも私たちが見失っていたものを想い出すための扉となる作品です。


  この四冊はどれも、随想の形式を採(と)っています。
  随想には、いつも二つの要素が折り重なるように存在しています。
  それは詩情と叡智(えいち)です。
  この二つが一つになったとき、
  はじめて随想が生まれるといった方がよいのかもしれません。
  そして、この四冊を読み解いていく、
  鍵となる言葉は「つながり」です。
  (略)

                           (pp.4-5)


司会の安倍みちこ、伊集院光と対話しながら
講義を進めていく若松がいい。
過剰な物言いにならないよう、精確に、謙虚に、
けれど確信を持って重たいテーマに僕たち視聴者を接近させていく。


若松の不器用なまでの真摯さに手引きされ、
四人の著者たちの「詩情と叡智」のカンテラに助けられ
僕たちは深い、深い場所に自分の足で降りていく。


生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

  • 作者:セネカ
  • 発売日: 2010/03/17
  • メディア: 文庫
14歳からの哲学 考えるための教科書

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