100分de名著/ル・ボン『群集心理』(講師:武田砂鉄)

講師の武田砂鉄と司会の伊集院光
一冊の名著を前に対論している面白さがある。
Eテレ100分de名著/ル・ボン『群衆心理』。



今月は砂鉄の柔らかな挑発に、
伊集院がつい乗っかってしまう丁々発止が見もの。
こんな名著紹介の方法もあるんだなと興味深く見ている。
安倍(NHKアナウンサー)の役割も見逃しがたい。
二人のやりとりに耳を澄ませながらも、分かったふりをせず、
絶妙のタイミングで視聴者が疑問に思いそうなことを自分の言葉で語る。


テキストの最後に砂鉄はこう書いている。


  このシリーズでは、四回にわたって
  自分なりに「わかりやすく」解説してきたつもりですが、
  もしあなたが満足してしまったなら、
  私の目論見(もくろみ)は半分失敗です。


  このテキストを一読して、
  「よくわからないな」「武田のいっていることは怪しいぞ」
  と思っていただくことが、ゴールであり始まりなのではないかと思います。


  ここまでの議論を新たな入口として、『群衆心理』を手にとり、
  「わかりやすさ」に抗っていく態度を身につける。
  そのきっかけをつくれたのであれば嬉しい限りです。
  100分で名著は語りきれないのです。
 
                        (p.96)


砂鉄のこの「食えない」感じに
僕はすっかりハマっている。
もちろん、その意見に付和雷同はしないで、
自分の考えを深めるために。


テキスト目次を紹介しておく。


  【はじめに】現代社会を動かす群衆
  第1回 群衆心理のメカニズム
  第2回 「単純化」が社会を覆う
  第3回 操られる群集心理
  第4回 群集心理の暴走は止められるか


9月27日22時25分〜50分がいよいよ最終回。
放送後一週間、NHKプラスで無料で視聴できる。
詳細は下線部クリックでお調べください。



(砂鉄最新作)

(砂鉄デビュー作。2015年第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞(選考委員/藤原新也)


[追記] 2021.10.6

丸善丸の内本店文庫部門で
『群集心理』が堂々第10位にランクインしました。
快挙だね。


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朝日新聞2021年10月2日朝刊書評欄より引用)