きらきらのフットネイルをパンプスに(瓜生毬乃)

クリッピングから
讀賣新聞2021年9月20日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、書き留めます。


  アルコール禁止されてる店先で
  手にアルコール吹きかけている

         上尾市 関根裕治


    【評】言われてみれば、なんとも皮肉なものである。
       コロナの時代を象徴する光景だ。
       目の敵にされたり、消毒に重宝がられたり、
       アルコールも戸惑っているか。


コロナ禍を詠んだ歌はつい敬遠しがちになってしまうのですが、
関根さんの作品は言葉の使い方に過不足なくて、いいな。


  きらきらのフットネイルをパンプスに
  無理やり押し込み御社へ向かう

          横浜市 瓜生毬乃


    【評】「御社」の用い方が巧(うま)い。
       この一語で、就職の面接とわからせてしまう。
       自分流のオシャレを隠し、
       パンプスという型にはめて、出発するのだ。


「個性を大事に」という建前を信じているだけでは
望む就職はままならない。
でも、他人に見えないところに残したきらきらフットネイルが
自分を守ってくれる最強アイテムのようでいいと思う。


  にわか雨なんども降ってベランダは
  波打ち際の最小単位

         東京都 カラスノ


カラスノさんの言葉づかいが好きです。
「波打ち際の最小単位」なんて
自分ではとても思いつかない。


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