高樹のぶ子『少女霊異記』(文藝春秋、2014)

Eテレ「100分de名著」11月の講師、作家・高樹のぶ子
番組テキスト「はじめに」で紹介していた。
「現代の文学ではなく古典と思いきり格闘したい」と2014年に発表した作品。
『少女霊異記(りょういき)』(文藝春秋、2014)を読む。


少女霊異記

少女霊異記


「地味な職場」薬師寺非正規社員として働く
20歳の女性・高畑明日香が主人公。
明日香は高校生の頃から、なぜか地名の由来に惹かれている。
愛読書は823年頃、景戒が編んだ日本初の説話集『日本霊異記』。


明日香の周囲でミステリアスな事件が続き、
すべて『日本霊異記』本文(縁)に由来がある。
畳職人の繁さん、カラスのケイカイ(景戒から名付けた)、
ボーイフレンドの岩島らに助けられながら、事件の謎を読み解いていく。
以下6編から成る。


  奇(くす)しき岡本
  飛鳥寺の鬼
  率川(いさがわ)神社の易者
  八色(やくさ)の復讐
  夢をほどく法師
  西大寺の言霊


日本霊異記』の語る時代と現代の奈良を行きつ戻りつ、
物語はテンポよく進む。
バイプレイヤーの繁さん、カラスのケイカイの設定が効いていて、
文章にユーモアを付加している。



この作品の執筆後、2020年、
高樹は『小説伊勢物語 業平』を発表。
今度は日本初の歌物語『伊勢物語』を
在原業平を主人公にして小説に仕立てる挑戦だ。
「100分de名著」ではこの新作を参照しながら、
作者自身が司会の伊集院光、安倍みちこと共に原典を読み解いていく。


明日香さんの霊異記 (潮文庫)

明日香さんの霊異記 (潮文庫)

(改題され、文庫になった)


日本霊異記 (平凡社ライブラリー)

日本霊異記 (平凡社ライブラリー)

  • 発売日: 2000/01/24
  • メディア: 文庫
(原典も読みたくなりました)