パラグアイの妹が、スマホデビューを決めさせた(平古場信子)

クリッピングから
毎日新聞2020年11月16日朝刊
読者投稿欄「女の気持ち」 スマホに感謝
栃木県足利市 平古場信子 無職・79歳


つながっていたい人がいて、
これまで諦めていたことに挑戦する決心がつく。
平古場さんの飛躍の一歩に拍手を送ります。


  世はスマホの時代と感じてはいても、
  老いた頭には無理だとあきらめていた。
  そんな私にスマホデビューを決めさせたのは、
  南米パラグアイに住む妹だった。


  私が20歳、妹が10歳のとき私たち一家は南米に移住した。
  私は5年後に帰国し、その後ほかの妹たちも次々に帰国したが、
  末の妹だけが残り、定住している。
  たくさんの苦難を乗り越えて今は平穏に暮らしているが、
  妹の心から日本が消えることはない。


  今年は一時帰国の予定だったが、コロナ禍で空港は閉鎖。
  電話は故障し、郵便も届かない。
  「ラインは通じるから、そちらも持ってくれない?」。
  妹の言葉に迷いは消えた。
  2人の子どもたちには「認知症予防になる」と話すとOKが出た。


  スマホを手にして3週間。
  カタカナや横文字の意味がわからなかったり、
  タッチに慣れなかったりと四苦八苦したが、
  妹と無料通話ができるようになった。


  パラグアイと日本の時差は12時間で、日本が昼なら向こうは夜中。
  それでも最初の2、3日は昼夜なく夢中で話し合った。
  めいは医師になっていて、防護服姿で働く写真も見ることができた。
  文明の利器のありがたさを感じている。


  「まだ春なのに今日は38度になるんだって」
  「こっちはようやくいい気候になったよ」
  こんな会話で今夜も始まった。


f:id:yukionakayama:20201119114018p:plain:w450