クリッピングから
讀賣新聞2020年8月31日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週も好きな歌3首、独断で選んでみます。
次の世に紋切蝶の無邪気ほし
父より継ぎし会社をたたむ
国分寺市 越前春生
【評】「紋切蝶(ちょう)」は、紋白蝶にかけた造語だろう。
紋切り型の生き方を平気でいられる蝶…
そうでなかったからこその苦労があったのだ。
万智さんの補足がなければ
「紋切蝶」の意味が分かりづらかった。
それが分かると後半の句の哀しみ、詠み手の無念が伝わってきた。
一日の半分が過ぎ朝が来る
私だけの昼という朝
三島市 芹沢詩子
朝起きてから昼まではご主人やお子さんの世話でてんてこ舞いで
昼が来てようやく自分の一日が始まる……
僕はそんなふうにこの歌を味わいました。
新聞を広げて読みし十歳は
正座しており八月六日
75年前、広島に原爆が落とされた日。
その日の新聞を正座で読む十歳がいるとは
僕にとっても新鮮な発見でした。
8月が過ぎていきます。
まだまだ暑い日が続く中、みなさま、どうぞご自愛ください。