ぽこぽこ画面に生徒現わる(矢島佳奈)

クリッピングから
讀賣新聞2020年7月27日朝刊
読売歌壇(俵万智選)

今週も好きな歌3首、
独断で選んでみました。


  オンライン授業開始の二分前
  ぽこぽこ画面に生徒現わる

       船橋市 矢島佳奈


「あ、わかる」と今なら通じる人が多い光景ですね。
オンラインでも教室(?)に飛び込むのは
ギリギリ二分前なのがおかしい。


  赤かぶら又根スライスハート形
  だあれもおらず薄く塩ふる

       武蔵村山市 藤しげし


「ハート形」と「だあれもおらず」の対比が心に残ります。
誰かに見せたいよね、せっかくのハートのカタチを。


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  母の日に子より届きしカーネーション
  今第二波の花咲き盛る

          東京都 広田澪子


    【評】届いた時は蕾(つぼみ)だったものが、
       次々と咲きはじめる。
       こんな「第二波」なら歓迎だ。
       時事的な言葉の活(い)かしかたが巧(うま)い。
       明るい話題で用いられているところにホッとする。
       今年ならではの母の日の歌。


最初にこの歌を読んだとき、
「第二波の花ってコロナウイルスのこと?」
と誤読してしまいました。
万智さんの評を読み、落ち着いて読み直してみて、
蕾だったカーネーションが第二波として咲いたことがようやく分かり、
「ああ、いい歌だなぁ」と味わうことができました。


僕のようなそそっかしい読者のために
万智さんが懇切丁寧な解説を
限られたスペースでしてくれていることにも気づきました。


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