2番線ホームがジュラ紀に戻るとき(犬口マズル)

クリッピングから
讀賣新聞2020年11月10日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、抜き書きしてみます。


  一席分空いたソーシャルディスタンス
  ひとりで泣くにはよい映画館

          さいたま市 大竹ひかり


     【評】ソーシャルディスタンスの思いがけない効用。
       「よい」が強調されるリズムが心地よい。


どんな物事も否定面からばかりでなく
肯定面から見ることもできるんですね。
その心の持ちようを僕も見習いたい。


  街の声聴くかのように身を寄せて
  離れてはまた身を寄せるバス

           東京都 武藤義哉


    【評】バス停ごとに近づき、また離れるバスの動き。
       その様子をこんなふうに解釈できるとは。
       街を景色を優しく見せてくれる一首だ。


夕暮れ時の光景が目に浮かんできました。
街で暮らす人々の帰宅時。
停留所に近づき、また離れていくバスの動きまで見えるようです。


  2番線ホームがジュラ紀に戻るとき
  貨物列車の甲高き声

         山梨市 犬口マズル


音が聞こえてきました。
ジュラ紀の恐竜の鳴き声が。
三十一文字のタイムマシーンに乗せてもらって。


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てにをは俳句・短歌辞典

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  • 発売日: 2020/08/28
  • メディア: 単行本