青空はけっとばされて彼方へと(木村一雄)

クリッピングから
讀賣新聞2020年6月29日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


コロナ禍に暮らす日々からも
新しい歌が次々生まれています。
一首一首にその方の生きている証しが伝わってくるようで
読んでいて励まされます。


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  たよりなきふたりの量の米を研ぐ
  水遊びするように右の手

        つくば市 岩瀬悦子


    【評】家族が多くて米の量があれば、ジャッジャッと力がいる。
       ままごとのような量に、二人の暮らしを実感しているところがリアルだ。
       結句を「ような」とした場合と比べてほしい。
       より動きがあって、魅力を感じる表現だ。


「水遊びするように右の手」。
「水遊びするような右の手」。
「に」と「な」をたった一文字入れ替えるだけで歌の印象が変わることを
万智さんが具体的に教えてくれました。


  リモートのできぬ職なりひとりずつ
  おでこに触れる朝の検温

         船橋市 矢島佳奈


    【評】保育園の先生のようだ。
       この状況で、大変さをことさらに言うのではなく、
       具体的な仕事をしっかり描いたところがいい。


「おでこ」という言葉の感触が心地いいな。
リモートワークの一言で
すべての仕事が魔法のように片付く訳でないことを
あらためて気づかせくれました。


  青空はけっとばされて彼方へと
  バク転スワン決めたる少女

       大和市 木村一雄


「バク転スワン」ってどんな技だったっけ?
YouTubeで確認して「うわぁ〜、凄いや」と脱帽しました。
「けっとばされて」に少女の生命力を感じますね。
青空をけっとばすのだから戸外の風景ですね。
言葉でなく身体で何かに反抗しているようで、かっこいいや。



バク転スワン


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