『小室直樹の世界—社会科学の復興をめざして』
(ミネルヴァ書房、2013)で編著者・橋爪大三郎が書いていた。
『勤勉の哲学』(引用者注:山本七平著)は1979年、
PHP研究所から出版され、その後PHP文庫に、1984年に収められた。
小室直樹博士はその解説の執筆を依頼され、
大変に長大な解説を書いたので、山本氏の本文に匹敵する分量になった。
(引用者注:本文271頁、解説85頁)
現在絶版であるけれども、
もしも古書店でPHP文庫版をみつけたら、
大いに価値のあるものなので見逃してはならない。
小室博士の解説は基本的に、マックス・ウェーバーを踏まえながら、
近代社会と勤勉の原理を説き、
特に山本七平氏が日本人が勤勉であるのはなぜなのか
という根本的な疑問に辿りつき、
それを比較宗教社会学的に分析しているという、
この仕事自身がどれだけ価値があるものかということを
明らかにしている。
山本七平氏が解説を依頼し、
小室氏がかくも長大な論文で応えたということは、
二人のあいだの信頼の厚さ、
そして小室博士が山本七平の最大の理解者は自分である
と強く自負していることを示すと言って間違いない。
(pp.59-60)
橋爪大三郎にこう断言されると、是が非でも読みたい。
都内5区の公立図書館サイトを検索したが、
単行本は所蔵していても、小室解説掲載の文庫は置いていない。
この解説読みたさにアマゾン古書店サイトを探し、
送料別1,915円の出物を見つけた。
文庫としては割高だがやむを得ない。
- 作者: 山本七平
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 1984/01
- メディア: 文庫
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以下の三部構成のまことに充実した解説だった。
橋爪先生の言葉に嘘も誇張もなかった。
はじめに
近代資本主義はなぜ生まれたか
日本的資本主義の精神
通常の解説の域を遙かに超えている。
山本との共著と言ってもいいくらいだ。
「解説」はこう終わっている。
では、なにが日本の真の近代化をもたらしたのか。
日本近代化のために必要不可欠な絶対者を作りあげたのは誰か。
本書はこの問に答える直前でおわっている。