先日読んだ『数学を使わない数学の講義』が
予想以上に明晰で面白かった。
村上篤直『評伝 小室直樹(下)現実はやがて私に追いつくであろう』
(ミネルヴァ書房、2018)を連読する。
- 作者: 村上篤直
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2018/09/18
- メディア: 単行本
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生前の小室に一度も会うことのなかった村上が
残された資料を丹念に読み込み、存命の関係者に辛抱強く取材した。
重厚な評伝の下巻である。
「奇人学者」程度の認識しかなかった僕は
この一冊で小室博士の学問、人柄に一気に魅せられた。
小室の弟子であった橋爪大三郎編著
『小室直樹の世界—社会科学の復興めざして』(ミネルヴァ書房、2013)巻末に
「小室直樹文献目録」「小室直樹博士略年譜」を編んだのが村上だった。
「あとがきにかえて」に慎ましく
本書執筆の動機を書いている。
筆者がアカデミアの世界から脱落した直後のことであった。
共同体(ゲマインデ)から、何の準備もなく飛び出た筆者は、
連帯(ソリダリテ)を失いアノミーに陥ってしまった。
しかも、行動によってこれまで信じてきた信念体系を
否定してしまったのである。
さらに、自分だけが取り残されてしまったという気持ちとともに、
裏切ったという気持ちに苛(さいな)まれた。
生き地獄が始まった。
(p.674)
村上を救ったのは小室の著作群だった。
『田中角栄の呪い』に始まり、
小室の書いたものをすべて集めはじめた。
その集大成がウェブサイト『小室直樹文献目録』となり、
公開することによって、一般からも広く小室の文献情報を募った。
田中角栄の呪い―"角栄"を殺すと、日本が死ぬ (カッパ・ビジネス)
- 作者: 小室直樹
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1994/02
- メディア: ペーパーバック
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筆者は、生前の小室直樹に会ったことがない。
それでも、今、運命的に導かれ、
小室直樹と同時代に生きられたこと、
その生き様、学問を知ることができたことに感謝している。
最後に、生前にお礼をいえなかった小室先生にひとこと。
命を救ってくださって、どうもありがとうございます。
小室先生は私の命の恩人です。
(p.677)
本書は佐藤優さんに
同志社講座「宗教改革とは何か?」の講義(第9回)で教えてもらった。
その後、メルマガ「佐藤優直伝・インテリジェンスの教室」で
佐藤さんが本書を推薦する理由を読んだ。
本書を読み進めながら、
小室が残した膨大な著作を公立図書館、古書店サイトで探し、連読し始めた。
読了後に、その感想を書きたい。
- 作者: 小室直樹
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