小室直樹『ソビエト帝国の崩壊』(カッパ・ビジネス、1980)

小室直樹博士の一般読者向け第二作が出版されたのは1980年である。
ソ連が崩壊したのは11年後の1991年。
まるでソ連崩壊後に出版されたような内容の精確さに目を見張った。
小室直樹ソビエト帝国の崩壊—瀕死のクマが世界であがく』
(カッパ・ビジネス、1980)を読む。


ソビエト帝国の崩壊―瀕死のクマが世界であがく (光文社文庫)

ソビエト帝国の崩壊―瀕死のクマが世界であがく (光文社文庫)


出版後、40万部を超えるベストセラーになった。
本書を構成する三章は以下の通り。


   1. ソビエトの内部崩壊がはじまった
   2. ソビエト軍は見せかけほど恐くない
   3. 日本を滅ぼす"平和・中立"の虚構


「まえがき」から引用する。


   ソビエト帝国は、
   『資本論』という一冊の本が生んだ巨大な人造国家である。
   レーニンスターリンの天才がはぐくみ育てた人類の夢であった。
   (略)


   私はこの本で、
   ソビエト帝国というものを、その根源から考えなおしてみた。
   そして得た結論は、この国が、かならず内部から瓦解(がかい)する、
   いやすでに崩壊しつつあるということだ。
                           (p.3)


ソ連の現状・未来の分析だけでも刮目すべきなのに
本書はそれにとどまらない。
小室博士の分析は、現在および未来の日本、日本人に返ってくる。


   3章では、緊迫した国際情勢の中で、
   日本はどう行動すべきか、について述べた。
   現在の防衛論議が、その前提においてまちがっていると思ったからだ。
                            (p.5)


小室学を継承した橋爪大三郎副島隆彦、宮台慎司、大澤真幸がつながる。
マルクス、マクス・ヴェーバーがつながる。
ユダヤ教キリスト教イスラム教、仏教がつながる。
社会科学の復興をめざした小室博士の縦横無尽な学問活動のおかげで
ドットの断片が一気につながっていくような快感を覚える。


村上篤直『評伝 小室直樹(上下二巻)』を教えてくれた
佐藤優さんにもあらためて感謝したい。
これからの世界、日本、自分を考えるための一大鉱脈が小室百学に見つかりそうだ。
佐藤優『自壊する帝国』と連読すれば
さらに得るものが大きいだろう。


自壊する帝国 (新潮文庫)

自壊する帝国 (新潮文庫)