小室直樹『痛快!憲法学』(集英社インターナショナル、2001)

橋爪大三郎小室直樹の高弟であり、かつ優れた書評家である。
小室博士の著作を橋爪書評を元に
 (1)自分で購入するもの 
 (2)図書館で借りるもの
 (3)ひとまずパスするもの、
の3カテゴリーに分けてみる。
限られた書籍購入費の運用にあたって、
この指針が実に頼りになるのだ。


痛快!憲法学―Amazing study of constitutions & democracy

痛快!憲法学―Amazing study of constitutions & democracy


読了した『痛快!憲法学』(集英社インターナショナル、2001)について
橋爪は『小室直樹の世界』(ミネルヴァ書房、2013)にこう書いていた。


   斬新なイラストとデザインで、
   ベストセラーになった『痛快!憲法学』(2001)。
   編集を担当した島地勝彦氏(集英社インターナショナル)との
   合作と言ってもいい本である。よい本である。


   この書物のどこがよいかと言うと、
   憲法のことを何もわからないシマジ君なる人物が聞き手になり、
   小室博士の教えを受けるという、
   レクチャーの臨場感にあふれているところ。
   かけあい漫才のようで、
   読者よりできの悪そうなシマジ君を横目にみて、
   多少安心しながら、小室博士の講義を聴講することができる。
   そういう、巻き込まれ感が痛快なのだ。
   (略)


そして本書の特徴を簡潔かつ精確に紹介していく。


   つぎに、この書名にごまかされてはいけない。
   憲法を扱っているようだが、中身は社会科学原論。
   もちろん、憲法とはなにか、
   憲法がいかに生まれたかが書いてあるわけだが、
   西欧近代主義の前提条件が縦横に参照される。


   その先駆形態として、キリスト教があり、教会があり、
   法学があり、哲学があり、中世封建制があり、絶対王制があり、
   さまざまな思想的格闘があり、
   それらが有機的に組み合わさるなかから、
   憲法と近代社会のアイデアが析出していった。
   その全過程が、手に汗握るような迫力で描かれている。
   これこそ最良の、社会学入門書と言えるだろうと思う。
   (略)


「完璧を求める人」橋爪の筆はここで止まらない。
ダメ押しがある。


   なお本書には、
   『日本人のための憲法原論』(2006)という再刊本がある。
   これは『痛快!憲法学』を改題し、図版を省いて
   本文のテキストを横書きから縦書きにしたもの。
   もしもどちらでも買えるのであれば、『痛快!憲法学』が断然よい。


日本人のための憲法原論

日本人のための憲法原論


ここまで書かれて僕は完璧に説得されてしまいました。
古書店サイトで『痛快!憲法学』を購入し、通読。
橋爪先生のおっしゃる通り、
最良の社会学入門書であることを実感しました。
こづかいで買える値段の時に一冊買えて、本当によかったよ。


本書については、小室博士マニアの村上篤直が
『評伝・小室直樹(下)』(ミネルヴァ書房、2018)に
思い入れがたっぷりに書いているけれど、
長くなるので、その引用はまた別の機会に。



橋爪書評を読まなければ、
斬新なイラストの表紙ゆえに購入をためらっていたかもしれないな。
橋爪大三郎には書評・解説だけを集めた一冊があって、
マニアックなセレクション、密度の濃い内容、
軽快な文章で楽しめる。


書評のおしごと―Book Reviews 1983‐2003

書評のおしごと―Book Reviews 1983‐2003

(図書館で借りました! 橋爪先生、買わないでごめんね)